「りんごの木の下で」    作 ミルヴォ            2011年 6月9日

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登場人物

Chap1

Chap2

Chap3

Chap4

Chap5

Chap6

Chap7

Chap8


  Chap8  リンゴの木の下で


土倉事件のときに トランペットを奏でた芳恵のことが、米軍の

GHQから噂が広がり、警察から、「米軍の将校クラブからパーティ-に

あの時のトランペット吹きのお嬢さんを是非、招待したいので、

連絡とれないか?」 と入院中の坂本に依頼があった。

刑事は、将校クラブのパ-ティ招待状を坂本に渡すと、「頼む。」と

言って、去った。


お見舞いに来た勝也と芳恵に、その招待状を渡した。


勝也、「こいつは凄い。マッカ−サ−元帥主催のパ−ティだ!!」

芳恵、招待状を覗き込む。 「信じられないわ・・・ゲストの中に、

ルイ・ア−ムストロングが入っているわ。 卓也さんの大好きな

・・・」 芳恵、勝也にお願いする。 


翌日、勝也、「芳恵、将校パ−ティ−出席オ−ケ−とれたよ。」

芳恵、大喜びで、「お父さん!!大好き!!」

パ−ティ−当日、芳恵は、かつて卓也とデ−トした時に着た

ワンピ−スを着て、父勝也の運転するジ−プに乗って、一路

日比谷の帝国ホテルに向かった。 芳恵、こころの中で、・・・・・

卓也さんの歌が、わたしのトランペットの音色のなかに生きて

いるの。きっと、わたしと一緒に リンゴの木の下で を歌って

いるの。・・・・・

 定刻に帝国ホテル前のロビ−に車を寄せると、GHQに止められ

招待状の呈示を求められる。 勝也、流暢な英語でGHQに招待状

を呈示し、芳恵に、待つように言って、ジ−プを駐車場に置きに

行く。 勝也を待つあいだ、芳恵は、トランペットを抱え、まわりの

アメリカ人の貴婦人たちに声をかけられる。 芳恵、こころ細い。

こんな時に卓也がいたらと思う。すると、大柄な黒人が、にこにこ

しながら、芳恵に話しかけてきた。 その人こそ、あの、ルイ・

ア−ムストロングではないか。「Are you Miss.Yosie?

Grate!! I am Rui Armstrong. Nice to meet you.

I hear that you play tranpet very nice.」

芳恵、精一杯の英会話を駆使して、笑顔で答える。

Rui,「Yosie,Tonight We play Tranpet each other.」

父勝也戻る。芳恵、Rui に勝也を紹介する。Rui、勝也と握手

して、あとで芳恵と一緒に、リンゴの木の下で を演奏します。と

言い遺して、他の来賓との応対に移った。

 二人は、会場の最前列に設けられた指定席に座る。

 やがて、ステ−ジの楽団が演奏を始める。Rui が司会進行

し始め、一通りのト−クがあって、そして、右手を大きく上げると

バンド演奏がピタリと止み、おもむろにトランペットを吹きはじめる。

ソロで、なんと、リンゴの木の下で ではないか!!

 Rui、主旋律を吹き終わったところで、ステ−ジを降りて、芳恵

にアイコンタクトしながら、歩みよって、Rui,芳恵の手を取り、

ステ−ジ上にエスコ−トする。そして、舞台中央に二人並ぶと

Rui,芳恵のトランペットケ−スを床に置いて中から、トランペット

を丁寧に取り出すと、芳恵に渡し、芳恵、トランペットスタンバイ

する。 芳恵、RuiにOKと頷く。Rui,バンドにリズムを出して、

リンゴの木の下で のイントロ演奏が始まる。そして、Ruiのサイン

で、芳恵、主旋律を吹き始める。 会場、芳恵の澄んだ音色に

どよめく。芳恵のトランペットの音色の中に、卓也が歌っている。

Ruiがトランペットで加わると一気にビッグバンドの心地よいリズム

に芳恵のトランペットも一層心地良く美しい音色を奏でるのであった。

卓也さんが歌っている。そして、卓也、芳恵を見つめて、「これで

いいんだ、芳恵。」と言ったように思えた。

会場から誰かが歌い始めると、次々と、歌声が湧きあがり、とう

とう、会場全員が、大合唱の渦となった。

卓也さんも父勝也も大きな声で歌っている。

芳恵は、かつて、卓也と最後に リンゴの木の下で を歌った

時のことを思い出していた。いつまでも、卓也さんとこのまま

リンゴの木の下で を歌っていたいと思った。

「これで、いいんだね、卓也さん。」

演奏が、終わり、大きな拍手、鳴り止まない。

芳恵の目に、涙が溢れ、止まらない。Rui,そっと、白いハンカ

チ−フで芳恵の頬に落ちる涙をそっと、拭いて芳恵の肩を抱き

締める。 拍手と歓声に包まれる。


「これで、いいんだ、芳恵。」 「これで、いいのね、卓也さん。」


End

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